一般登山道を通らず、沢を泳ぎ、滝を越えて行く沢登り。ルートは整備されておらず、自分でルートファインディングで道を決め、滝を登るか、巻くかも自分で判断する。人はほとんど入らないので、助けなんて求められない。
だからこそ、そのままの大自然が残っており、自然の美しさ、盛大さを直接感じられます。
2017年6月に沢登りと出会い、独学で試行錯誤しながら経験を積み、最終的には沢5級クラスにも行ったことがある私が、沢登りに必要な装備・道具を紹介します。
注意:沢登りは一般登山とは比較にならないほど危険なアクティビティです。ガイドや熟練者と一緒に行くことを推奨します。また、装備についても、登山用品店で納得いくまで相談して選択して下さい。
沢登りとは?
まず沢登りとは、具体的に一般登山と比較して何が違うのかをまとめます。沢登りとは、何をするのかがイメージできれば、自分に必要な装備が見えてきます。
沢歩き
大自然の沢を歩きます。歩きとは行っても、小さな滝は絶対にあるので、越えていく必要はあります。ただし、初心者用の沢であれば、滝は階段状になっており登りやすく、初心者でも可能ですが、足元は滑りやすく、転んで簡単に怪我します。
ナメ床と言われる岩を流れる沢。
小さな滝は登りやすく濡れながら楽しい。シャワークライミングというやつです。
天然のウォータースライダーは、沢登りの醍醐味の一つでしょう。
沢泳ぎ
泳ぎが必要な沢は、初級では珍しいです。泳ぎが必要ということは、それだけ水量が多く、大きな滝がある証でもあるからです。
夏でも沢の水は冷たく、しっかりとした服装を着ていなければ、寒くて入れるものではありません。
また両側を高い壁で囲まれた場所をゴルジュと言い、泳いで突破するしかありません。
両側を高い壁で囲まれたゴルジュを泳ぐ。ウェットスーツ無しでは無理です。
ロープで引いてもらう手もあります。
木が流されてきたことを考えると、あそこまで増水する時があるということ。このような圧倒的なゴルジュを廊下とも言います。
滝を巻く
越えられない滝がある場合、大回りして滝を避けて進むしかありません。滝を直登するよりも、この巻きが危険な場合が多いです。越えられない滝ということは、両側が崖になっており、滑落の危険度大です。
懸垂下降(ロープで降りる)
滝を巻いた時や、沢を下る時は、ロープを使って安全に降ります。ただ、この懸垂下降での事故が多いとも聞きます。
熟練者にしっかりと教わり、安全に技術を身につける必要があります。また、懸垂下降の時には、エイト環などの下降器が必要になります。
想定される事故
懸垂下降。
ロープで木を巻いて、2本を掴みながら降りれば、下降後にロープを引くことで回収できます。
滝登り
小さな滝はそのまま登れますが、高さが高くなると安全確保のためロープを使用して登ります。
先頭で登る人の安全はどうしているのか?沢登りを始めた頃は、私はそんなことを考えていました。マルチピッチクライミングの難しい技術が必要なので、この記事では触れません。
滝が大きくても、階段状になっており滑落の可能性が低い場合はロープ無しで行くこともありますが、落ちたら終わりなボルダリングです。
先頭が垂らしてくれたロープを頼りに登る。初心者は基本的に、この方法で安全を確保して、登ります。
レベルが高く、落ちる可能性がある場合はマルチピッチクライミング。濡れた場所でのロッククライミングです。
リスクが高いのがわかると思います。初めは、ツアーに参加して、どんなものか知るところから入るのが良いです。
沢登り装備リストまとめ
ここから装備リストです。私の場合、最低限の装備で沢登りを始め、他の物でどうにか代用していた時期もありました。それも含めて紹介していきます。
まずはまとめです。
服装(必須)
- 水中保温性が高い服(ウェットスーツなど)
基本装備(必須)
この装備は全て必要です。
- ザック(防水が理想)
- 防水袋(ザック内パッキング用)
- ヘルメット
- 沢靴
- 手袋
- ハーネス
- 下降器(懸垂下降用)
- スリング(安全保持用)
- カラビナ(2個は必須)
- ロープ(共用の場合が多く、必須ではない)
登攀装備(初心者は不要)
ツアーであれば、ガイドさんが持っている装備になります。懸垂下降したり、ロープを使って登ったりする場合は必要になります。この記事では詳細は書きません。
- ロープ
- 登攀補助器(登る時にロープに固定用)
- カラビナ類
- スリング類
- ビレイ道具
- ハンマー、ハーケン
- カム一式
- クイックドロー
その他(あれば嬉しい)
- 防水カメラ
- 水中ゴーグル
- 三脚
- ホイッスル
- (ライフジャケット)
- (帰用スニーカー)
緊急時(リスク管理次第)
緊急用は登山の考えと同じです。
- ツェルト
- 緊急セット
ここから、必須装備について詳細を説明していきます。
服装
私は2通りを使い分けていますが、個人的なおすすめはウェットスーツです。夏でも沢は寒く、一度冷えてしまうと体を動かしても復活しません。
パターン1:泳ぎ少なめで、帰りに登山道歩く。
少し濡れる程度であれば、濡れてもすぐに乾き、保水しにくい服装で行きます。水から上がれば保温性を維持してくれます。
- アクティブスキン上下(インナー、冬山でも使えるので、買っておいて損はなし。体表面の濡れを防ぐ)
- フラッドラッシュ上下(濡れても保温性がある)
- レインウェア(防水性があるので、濡れ防止)
- 半ズボン(ポケット使いたいだけ)
パターン2:泳ぎ多い。
マリンスポーツもやっているので、セミドライスーツ(ウェットスーツより暖かく濡れない)を愛用しています。ウェットスーツでも寒い場合がありますが、セミドライであれば、泳いでも潜っても寒くないです。
ウェットスーツであれば、仲間たちはモンベルを愛用していました。
沢登り始めた頃
寒さを我慢して行けば、行けなくはないですが濡れるのを避けた沢登りになり、全力で楽しめないので、やめた方がいいです。
- アクティブスキン
- ラッシュガード
- 半ズボン
基本装備
ザック
防水ザックが理想で、防水ザックの強みは下記です。
- 浮かんで浮き輪がわりになる
- 中身を全て防水パッキングする必要がない
- 最適化されており、体を動かしやすい
他にも、メッシュ構造で水がすぐ抜けてくれるものもあります。(中身の防水パッキングは必須)
沢登りを始めた頃は一般的な登山用ザックで行っていました。問題があるとすれば、水がザック内に溜まり、水から上がると重いこと。そこまで不便ではないので、一般登山ザックをそのまま使うのもありです。
ただ、やはり防水ザックの方が良く、私が使っている防水ザックはこれです。完全防水で水は入ってきませんし、重量が軽いので、沢登り以外にも使い勝手がよく、日帰り登山ではよく使ってます。(沢登り用と思わず、他に使うことも考えればお得です)
防水袋
防水リュックだろうと、中身も防水でパッキングは必要です。濡れたら困るものもありますしね。(防水リュックでも、潜ったり、浮き輪がわりに使えば水が入る場合はあります)
防水スタッフバックは色々なメーカーで出ていますが、私はモンベルの物を使っています。
沢登りを始めた頃は、ゴミ袋を二重にして縛って、防水袋の代わりにしていました。これでも問題はなかったのです。ただ、穴が開きやすいし、ダサいのでやめました。
ヘルメット
これは言わずもがな、必須です。沢登り用というものはないので、登山用のものを使用して下さい。
沢登りを始めた頃は、ロードバイク用のヘルメットを使っていました。ただ、調べていくとやはり防御する目的が異なり、何かあった時に助かる確率が高いのはやはり登山用です。自己責任ですね。
私はぺツルのボレオがフィット感が1番良かったので使っています。
沢靴
沢靴のソールは大きく2種類あり、フェルトとラバーです。どっちが良いかは好みの問題と、沢の岩質、苔状況によるので一概には言えません。
初心者であればフェルトが良いと思います。その理由は、どのような場所でもそれなりにグリップしてくれるからです。どのような沢に行くかわからない状況ならば、フェルトが間違いありません。
ただ、どちらも使用した私は、ラバーに落ち着きました。その理由は、フェルトは岩場でもそれなりにしかグリップしないからです。フェルトは足指だけで立ち、クライミングシューズのようには使えませんので、滝登りで攻めきれない。ラバーであれば、踏み込めて、登攀力は高まります。(これも一概には言えず、苔が多い岩場ではラバーは弱い)
私の使っているラバーソールの沢靴はこれです。安いですが性能は十分で、良い相棒です。
代用品としては、スニーカーでも行けます。ただし、専用に設計されたソールではないので、滑り安い場合もあります。
マリンシューズはダメです。強度が弱く、ソールは薄いですし、すぐ壊れます。
また、靴下は履いたほうがいいです。なくても遡行中は問題ないのですが、後で沢靴がめっちゃ臭くなりました。
手袋
何でもいいですが必要です。ワークマンの安いやつを使ってます。長く水に浸かると指がふやけてきて、簡単な突起でも指を切ります。手袋があればその怪我を防げます。
ネオプレンの手袋があればいいかもしれませんが、私はワークマンのもので問題なしです。
ハーネス
懸垂下降する時、ロープ有りで滝を登る時、体を支えるのはハーネスです。
ロッククライミング用がオススメです。強度も高く、カラビナをかける場所も最適化されてるし、重さは気になりません。
沢登り始めた頃は、安さに目が眩み、沢登り用の保水しない、軽いものを使っていましたが、強度が弱く、落下衝撃に耐えられないものが多く、すぐ下記の物に買い換えました。
下降器(懸垂下降用)
懸垂下降する時に使います。私はエイト環を使っており、特に困ったことはありません。
他にもいろいろな下降器があり、何が良いかまでの知識はないので、お店の人に聞いてください。
スリング(安全保持用)
落ちたら危険な場所(懸垂下降する前の場所など)で、支点と自分を固定するために使います。木にスリングを巻き、それをハーネスに固定することで、落ちないようにします。
登山用品店にある丈夫な紐でも代用可能ですが、スリングの方が取り回しが容易です。スリングは登山用品店に置いてます。
カラビナ(2個は必須)
下降器を使用したり、スリングで固定する時に必要です。絶対に登山用を使用して下さい。安全環付きを2個は必要です。安全環とは、カラビナを閉じた後でロックできるものです。懸垂下降などの時に誤って外れることを防いでくれます。また、1個あれば行けるかもしれませんが、落として無くしたら困るので予備です。
応用として、カラビナを下降器代わりに使うこともできます。
形が沢山ありすぎて迷うと思います。お店の人に用途を言って一緒に選ぶのが良いと思います。
ロープ
主に懸垂下降で使います。レベルが高くなると、リードで登る時の安全確保のために使います。私は、モンベルで購入した補助ロープの位置付けの8mm30mを使っています。
ざっくりロープは2種類あり、懸垂下降のみならば補助ロープで良いです。
クライミングロープ:滑落に耐えられますが、少し高く、重量も重め。(リードクライミングではこっち)
補助ロープ:滑落に耐えられる保証はないが、その分安く、軽く、取り回しが楽。(懸垂下降用)
その他
登攀用(垂れてきたロープと体を固定する)
ぺツルのマイクロトラクション。滑りが抜群に良く、小さいので買って良かった一つです。ロープに固定し、登る側には動くが、落ちる側では止まり、安全を確保できます。
防水カメラ
防水スマホでも十分な世の中になってきましたが、後で見返すとカメラの方がまだ性能は高そうです。オリンパスのTG-5がオススメですが、私はお金をケチってニコンのクールピクス300Wを買いました。それなりには満足です。
水中ゴーグル:綺麗な水があれば潜りたい。そんな人には必要です。
(ライフジャケット:泳ぎがとても多く、泳ぎに自信がない場合)
(帰用スニーカー:登山道で帰る場合は、距離によりますが履き替えたほうがいいです)
ご覧頂きありがとうございました。
沢登りはとても危険なアクティビティですが、とても美しい、最高な景色が楽しめます。皆さんが安全に沢を楽しめることを願います。
沢登りまとめ
これまでに私が登った沢をまとめてます。