嬉しいことがあったために、悲しいことに、当分大きな山に行けなくなる。後一回だけ、日帰り登山を許可されたので、悩んだ末に選んだ乗鞍岳。せっかくなので朝日を山頂付近で拝むべく、夜間登山です。
乗鞍岳は、当分登れなくなる私に、心が震える景色で出迎えてくれました。
場所:長野県、岐阜県
日程:2020年2月2日(日)
獲得標高:1480m
歩行距離:14.4km
登山時間:9時間50分
出会った自然の造形美
スタートはゲレンデ登山から。真っ暗闇の中、圧雪車だけが動き回り、その上には満点の星空。ヘッドライトを消して歩くのが楽しい。
ご来光。登ってくる前はガスで何も見えなかった世界が暖かく、明るくなる。
爆風が作り出す雪舞う世界。まるで山が生きている様な、太陽を出迎えてはしゃぎ回る子供の様な、金色の海の波の様な、美しさ。
人生初のダイアモンドダストのサンピラー。こんな景色を見せてくれた山に、感動して、嬉しくて、思わず涙した。
雪舞う乗鞍岳。雲一つない空の下、一歩一歩を噛みしめながら登る。
日程と装備
前泊
日の出を狙って夜間登山なので、家から出ようと思ったら22時起き。ちょっと意味がわからないので、前日のうちに近くまで移動して、車中泊する作戦にしました。
夜間登山で毎回不安に思っているのが、登山前のトイレです。登山中にしたくなったら大変!
登山口に、夜中に空いているトイレがあるのか不安だったので、道の駅で前泊することにしました。選んだのは「道の駅奥飛騨温泉郷上宝」。登山口の休暇村まで約1時間の場所です。
ここのトイレが最高でした!トイレに暖房付きで、ウォシュレット完備。登山前のトイレを念入りにできました。
21:00道の駅奥飛騨温泉郷上宝で前泊。
0:00起床→運転→01:30休暇村乗鞍高原到着→準備40分
ルート
【登り】02:10休暇村発→03:30ゲレンデトップ→05:10樹林帯終わり→06:10トイレ小屋→09:00朝日岳→09:20剣ヶ峰
【下山】09:40剣ヶ峰→10:45トイレ小屋→11:50ゲレンデトップ→12:20駐車場
登山時間:登り7時間10分、下り2時間40分(写真撮りながらのんびり登りました)
駐車場
休暇村乗鞍高原。宿泊施設で、多くの車が停まっていましたが、ドアは開かず、トイレがどこにあるかわからず、ここでのトイレは断念。(夜中だから仕方ないです)事前にしていて正解でした。
装備
厳冬期の雪山なので、装備は多いですし、-10℃で爆風の世界は初めてなので、何が必要か悩みまくりました。いつも自前の登山リストでチェックしてるので忘れ物は毎回ありません。
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行動着上(インナー、長袖、フリース、ソフトシェル、ハードシェル)ハードシェルは山頂付近で装備。登りは快適で、下山はフリースを抜いでちょうど。
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行動着下(インナー、防風ソフトシェル、ハードシェル)登りはちょうど良く、下山は暑かった。
- 足元(冬靴、ゲーター、アイゼンorワカン)
- 手袋(インナー、マトンソフトグローブ)雪がパウダーのためか、ソフトグローブでも濡れなく行けたがオススメはしない。
- カメラ(α7II、SEL24105、SEL1635F4、バッテリー予備2個)
- 三脚
- ドリンク(水筒0.8L+予備1.5L)0.5L使用。
- ダウン上下(使用せず)
- ストック
- ヘルメット(使用せず)
- 小物(ヘッドライト、救急セット)
- ツェルト(使用せず)
- 冬用手袋2個(使用せず)
- ゴーグル、山頂付近で装備
- サングラス、下山時はこっちに変更
- ピッケル 、山頂付近で装備
- 食事(行動食)
- 携帯充電器、バッテリー(使用せず)
料金
- 石川からの高速代往復:4540円
- 白骨温泉、泡の湯:1000円
- ひらゆの森昼食(下山後):1200円
登山
休暇村駐車場→トイレ小屋
02:10休暇村出発。車の温度計で、気温は-10℃。キンキンに冷えた世界よ久しぶり。満点の星空が見える中、心躍る思いで、登り出し、ひたすらにゲレンデのトップを目指します。
圧雪車がズンドコ動いており、少し賑やかです。こんな時間の登山車は絶対に邪魔なので、見えてないと思って邪魔にならない位置を歩きます。
初々しい圧雪跡を踏んじゃいます。すまぬ。ゲレンデはツボ足で行けました。
近くまで来た!すまぬ。こんな時間からお仕事して大変お疲れ様です。カッコ良く撮るから許して下さい。見える範囲で2匹いました。
この日は新月なのか月はなく、満点の星空です。たまにヘッドライトを消して、星空を見ながら静かに登るという遊びをしてました。安全なゲレンデだからできる遊びです。
ゲレンデは安全ではありますが、歩いて登るには傾斜が急な場所が多くあります。直登せずにジグザグに登る作戦。ワカン装着した方が登りやすかったかな。
ゲレンデの上部までくると、圧雪車の作業は終わっており、遠くに作業する圧雪車が見えるだけで、周りは闇です。
03:30ゲレンデトップ到着。自前の温度計では-7℃。ここから先はロープの向こう側なので、安全な世界ではありません。特に夜は道迷いに注意し、身を引き締めて、ワカンを装備して行きます。
気合いを入れて進みましたが、まだ道に迷う様な登山道ではありませんでした。左右を木々に囲まれており、踏み跡もあるので一本道です。
ここでもライトを消してみて、漆黒の闇の中で見る星空を楽しみます。
05:10ここから先は特に危険の看板。看板の通りで、ここから広い雪面で迷いやすく、風が強くなり、踏み跡は消えて明確な道はなくなってきました。
初めの方はまだ、明確な踏み跡があり、少し木も生えているので、それを頼りに進みます。この辺で、テント泊してる人が2組と、雪洞泊してる人が1組いました。羨ましい限りだ。
05:40トイレ小屋まであと35分の場所では、風でトレースは消え、目印となる木もない、風は強く視界も悪い。GPS、コンパスだけが頼りです。
06:10気がつくとトイレ小屋にいて、空は明るくなってきていました。朝日は拝めるかと思っていましたが、ガスの中なのかと少し落胆。けどこんなもんだよなと1人笑っていました。
トイレ小屋→乗鞍岳山頂
トイレ小屋でアイゼン、ピッケルに装備を変更していると、ガスが嘘だったかの様に視界はクリアになり、乗鞍岳のおおらかな姿が見えてきました。
ここで大問題発生!寒さに負けて、α7IIのバッテリーが即死!バッテリー抜き差ししても1枚しか撮れないハードモードに突入しました。
焦っている中でも、太陽は静かに顔を出してきました。爆風で雪舞う中の太陽は美しい。
ただ、景色は圧倒的に美しいのに、それを写真に撮れないもどかしさ、撮るのを諦めて目に焼き付けるだけでもいいかとも思いながら、必死にシャッターを切ります。
乗鞍岳も赤く染まります。
赤く染まった5分後には、太陽が登り黄金タイムです。まるで山が生きている様な、太陽を出迎えてはしゃぎ回る子供の様な、金色の海の波の様な、見ていて飽きません。
私がはしゃいで写真を撮っている間に1人静かに登って行きました。
私も初めはあの人と同じルートを登ろうと思いましたが、雪崩が大丈夫かわからなかったので、多くのひとが登る、この写真に写っていない右のルートから行くことにしました。
ふと太陽の方を見ると、あ!あれは!
まさか!ダイアモンドダストのサンピラー!氷点下10℃以下でしか見れないレア現象!乗鞍岳はなんてサプライズを準備してくれているのでしょう。本当に嬉しくて、感動して、涙が流れてきました。ありがとう。
自然と戯れすぎました。そろそろ山頂目指して登り出します。まずは朝日岳方向に直登します。
とても立派な建物があります。
ここから朝日岳、その先の乗鞍岳へ向かってひたすら登るルートで、一番人が入っている直登コースです。傾斜的にも雪崩の心配はなさそうです。
酸欠気味なのか、少し登ったら息が切れて休憩がてら写真を撮っちゃいます。景色が綺麗なんだからしょうがない。光、風、雪の芸術は飽きることがありません。
この風に流れる雪は大好きだ。
アイゼンとピッケルですが、今日はワカンとストックでも行けた印象です。日によっては、表面に雪はなく氷の塊で、滑落すると止まらないような状況になるそうです。
今日はシュカブラがついていて、滑って止まらないなんてことはありません。それにしてもテッペンが遠い。
今日はこんな装備です。爆風地帯ではゴーグル必須ですね。全く寒くありません。鼻出てるけど。。日焼け止めつけてても鼻は焼けちゃいました。
竜の鱗。樹氷の雪面バージョンですね。
サクサクと登って行きます。このグループの方でα7RⅡを使われている人がおり、話を伺うと、5枚ぐらいでバッテリーが落ちちゃうので、抜き差しして騙し騙し使っていると言っていました。α7IIは1枚ですけどね!
結構登ってきました。真白な山々が連なっています。
権現池は凍りつき真白け。グループの方の会話が聞こえましたが、ここまで真白になるのは珍しいそうです。乗鞍岳はいい仕事をしてくれています。
左側の台形が朝日岳、その先が乗鞍岳です。雪舞う乗鞍岳。雲一つない空の下、一歩一歩を噛みしめながら登ります。
09:00朝日岳。これはもはやエビの尻尾ではない、何だろう。爆風でモリモリです。
いざ、乗鞍岳、剣ヶ峰へ。ここが特に爆風で真っ直ぐ歩くのも困難な程です。稜線は広いので危険とは感じませんでした。
09:20乗鞍岳山頂。このてんこ盛りな雪の社だけが風よけです。この中に入ると不思議なほど静かです。
どこもかしこもてんこモリモリです。
大日岳(奥の院)と、その先の御嶽山を望みます。体力があれば大日岳まで行こうと思っていましたが、もうしんどいですし、乗鞍岳を堪能し尽くしたので、お腹いっぱいです。山頂の空気を味わって下山します。
乗鞍岳山頂→休暇村駐車場
09:40下山開始。一緒になったグループの方々はもうあんなに遠くにいます。今日は時間がたっぷりあるので、山を堪能しまくってしまいました。
手前の山に見える建物ですが、夏場は車でここまで来れるようです。鋭利な岩場地形ではなく、包み込むような大らかな地形の恩恵ですね。
下山は本当にあっという間。ザックザックルンルンです。
乗鞍岳の稜線よ、さらばじゃ。
この時間になると登ってくる人はとても多く、30人ぐらいとすれ違いました。
まだ気温は-10℃ぐらいあります
今日はソフトマトングローブで登れて、雪山グローブを出すことがなかったです。気温が低いからか、雪に手をついてもグローブに付着せず、叩いたら落ちるため濡れませんでした。寒くもなかったので、このグローブ優秀です。(決して厳冬期の雪山でオーバーグローブの代わりになるわけではありません)
気持ちの良いスノーハイク場ですね。
危険地帯はなかったので、ここでアイゼンを解除してストックに変更します。
10:45トイレ小屋。多くの人が気持ちよさそうに登って行きます。すれ違う人みんなが、この快晴に笑顔です。
氷化した地面。全面がこんな状態だったら恐ろしい山ですね。
登ってくる時は闇で、ガスで、爆風で、何もわかりませんでしたが、こんな場所を登ってきたようです。これはガスったら道がわからなくなりますね。天気が良いと気持ち良い。
乗鞍岳よ、本当にさらば。
あっという間にスノーハイク場を抜けて、樹林帯に突入です。よく登ってきたと思うほど距離が長く、周りの景色もあまり変わりません。
途中からも乗鞍岳は見えました。こう見るとかなり遠いですね。登る時は知らぬが仏な距離感です。
ひたすら下ります。え、まだなのかと何度思ったことか。登っている時はワクワクが止まらず、距離の長さは全く感じませんでした。
やっとゲレンデが見えてきました。非常に長く感じましたが、山頂からここまで2時間でした。
11:50ゲレンデトップ到着。
スノボー、スキーを楽しむ方々の邪魔にならないように端っこをひたすら歩きます。ゲレンデから乗鞍岳はドカンと見えて、存在感がすごいです。
12:20休暇村到着。あっという間の10時間でした。乗鞍岳よ、幸せな時間をありがとう。
悩んだ末に選んだ乗鞍岳でしたが、とても広大で、とても美しく、素晴らしい山でした。やはり日の出は美しく、夜間登山をしたかいもありました。
乗鞍岳は当分登れなく私に、最高のおもてなしで出迎えてくれました。
ありがとう。
登山後の温泉
私のお気に入りはひらゆの森ですが、近くにいい温泉ないかなーとGoogle マップで調べてみると、何か聞いたことがある温泉が出てきました。『白骨温泉』。行ってみました。
アクセスは良くなかったですが、行く価値ありの珍しい温泉です。
白骨温泉までの道は、冬季はチェーン着用と怖い文字。今は暖冬で暖かいから大丈夫でしたが、凍結箇所は何箇所かあり、朝方は危険そうでした。
まずは、案内所に行ってみました。白骨温泉は、いくつかの温泉が固まっている場所のようです。ここで、今日の営業状況、各温泉の話が聞けます。
話を伺い、1番有名という『泡の湯』に行きました。何と混浴!真っ白の温泉で体は見えないのでいいかもしれませんが、カップルで来ている人が何人かいて、新鮮でした。
男風呂に内湯と露天風呂が1つ、男女風呂から繋がっている露天風呂(混浴)が1つで、混浴は結構広いです。値段は1000円と高めですが、泉質がすごかったです。
今回の山行で活躍した道具
カメラ装備
カメラバッグは自力で編み出した方法で使っていますが、本当に便利です。
ノースフェイスのカメラバッグ
α7IIの寒冷地性能は貧弱で、抜き差しして1枚しか撮れない状況でした。一度冷え切るとダメな様です。何とか撮影はできましたが、雪山には全く向きません。ちなみに乗鞍岳山頂にα7RIIを使っている人がおり、5枚は撮れると言っていたました。やはりα7Ⅲですかね。
この画角が便利すぎる。SEL24105F4
登山装備
値段は高いが、それに見合う素晴らしいソフトシェル。防水ではないですが、防風性能は高く、よっぽどの爆風でない限り雪山でも活躍しています。4年使っても新品同様の丈夫さ。
さすがファイントラックの優秀なソフトシェル。防水ではないですが、雪はつかないし、防風性能は高いので、雪山でよく使っていますが、今回はミドルレイヤーポジションでした。
アクティブスキン上下は雪山必須装備です。汗冷えを感じません。
終始このグローブで行けてしまいました。もちろん防水の雪山グローブは必須ですが、カメラ撮影がしやすく最高です。
安定のストックです。